2011年10月1日土曜日

グアテマラ歯科事情

歯茎の中にたまった膿を排出するため、ここグアテマラにて、まさかまさかの根管治療(神経とか虫歯の治療のこと)を行うことになったワケやが、意外や意外、日本よりも海外で根管治療を行う方が、成功率が高いということが判明した。

というのも、根管治療の際に最低限使用しなければならないはずの”ラバーダム”というゴムカバーみたいなんが、日本では現在、あまり使用されていないらしいからや。
(歯医者にもよるみたいやが、日本の保険制度の関係上、患者全額実費負担やないと、歯医者側が赤字なるらしい)

日本と違い、アメリカでは当たり前のように使用されているというラバーダム。

同じアメリカ大陸にあるからやろか、現在通院してる歯医者でもしっかりと使用している。


なんでも、このラバーダムを使用していない場合の根管治療成功率は40%。
ラバーダム使用時の成功率は90%。
…らしい。

ホンマかウソかわからんが、これがホンマなら不幸中の幸い!

成功率が50%もUPするなんて!

「グアテマラで治療してよかった~」
ってことになるワケである。

が、これもまた医者による。


いくらラバーダムを使用しているからとはいえ、医者が真剣に治療に取り組んでいるか否かで、この成功率%は変わってくるのではないか?
と、僕は思うワケや。


通院初日。
検診とレントゲンだけやったので、なんなく診察は終わった。
事の重大さを伝えられ、禁酒を余儀なくされる。
言葉がわからないなりにも、理解するまでしっかりと説明してくれる彼女。
なかなか真面目な医者やなと感心した。


二度目の通院。
問題の歯に被せられた銀歯を見て、日本の医療技術に感心をよせている。
ーやっぱり真面目で熱心な医者やないかー
と思ったのも束の間。
この日から、彼女に対する”真面目なお医者さん”というイメージは段々と崩れさっていくのである。


銀歯の話が終わると、彼女と助手は世間話を始めた。

治療中やというのに、やれパン買う金がないやの、やれマンゴーが食いたいやのと、仕事にはまったく関係ない話を延々と続ける。

助手は話に夢中で、吸引ホースで僕のお口にたまった唾液や消毒液を吸い込むことを放棄。

医者も医者で、それに気づかず会話に夢中。

そして僕は、自らの唾液により窒息寸前。


結局1時間の治療時間中、ホースで唾液を吸い込んでくれたのは3度ほど。

しかも、吸い込みも甘々。

おかげでほぼ飲みこんでしもたやないか。
気分悪っ!


三度目、四度目もほぼこんな調子で治療が行われた。

毎度毎度、食べ物の話で盛り上がる彼女たち。

忘れさられた僕の唾液は、次第に喉の奥から盛り上がる。

まるで、逆流を起こした下水管の排水口から、汚物が外へと押し出されるかのように、唾液が上がってくる。

そうして出来た汚く臭い水たまりは、段々ラバーダムへと近づいて行く。

せっかくラバーダムを使用し治療する歯に対して、周りからの細菌や唾液の侵入を防ごうと試みても、医者や助手が話に夢中で真剣に見てなけりゃ一緒や。

せっかく上がった成功率50%も、遊び半分・仕事半分でやられちゃ半減。

成功率は65%ぐらいにまで下がっちゃう。

せめて彼女が日本人やったなら、
「バファリンの半分はやさしさで出来てるんやで」
と言えば、
「はっ!ゴメン!
もっと真剣にやるわ」
となるんやろうが、日本語も話せないのに日本語しか話せない日本人を小馬鹿にしちゃう外国人なワケやからして、そんなこと言っても、
「はぁ??」
と、一言返されるだけや。


しかしながら、2〜3年前から噛むだけで痛かったこの歯が、段々と物を噛めるようになって来たのは事実。

なかなかやるやんグアテマラ医者!
なかなかやるやんラバーダム!
と、思いながら5度目の通院がやって来た。


この日は神経の掃除ラストの日。

これが終われば後日にクラウンや(歯の被せ)。


いつも通りにラバーダム装着。

すると医者が、
「クラウンする? せん? どないする?」
と尋ねてきた。

いやいやいや、するもせんも、あんたが前回治療後に、クラウンしなあかんてゆーたんやないか!
と思いながらも、全く口がきかれへん状態なので、とりあえずうなずく。


「オッケー!
じゃあ、今日歯を切断するね!」

ーえ? なんそれ?
切断?
聞いてへんで!ー
と、思いながらも、ナチュラル ボーン テレサ・テンな僕は、このまま流れに身をまかせることにした。


すると、今までとは打って変わり、2人は食べ物の話をしなくなった。


ーもしかすると今から行う治療は、かなり難易度の高い治療なんか?
真剣に取り組む気になったんか?ー


2人の熱心さが伝わる治療が、今まさにここで行われる!
…予定であった。
が、そう甘くはなかった。


助手「今度の週末出かけたいんやけど、車出せる?」

ー知らんがなー

医者「ちょっと無理かな」

ーオリックスレンタカー行け!
オリックスレンタカー!ー


ー今話さなあかん?
週末の予定ー


プルルルル…
助手の電話が鳴る。

助手「はい。もしもしー」

ーえ? 出るんや!
しかも長電話?
医者。助手を怒って!


そうこうしてると、医者仲間が尋ねてきた。
ちなみにこの部屋には、入り口にドアどころかカーテンも仕切りもないので、誰でん彼でん入り放題。

ゆうきちゃんはいつも、同室にある椅子に腰掛け、治療風景を眺めてるぐらいやから。


医者仲間「自分もう飯食った?」

医者「いや、まだよ」

医者仲間「一緒行こうや」

医者「うん。まだかかるから待ってて」

医者仲間「ええ! まだかかるんや? 腹減ったから先に行くわ」

医者「まぢで! ほな、早く終わらすから待ってやぁ」

医者仲間「らじゃー」

ー早く終わらす?
こいつは何をゆーとるんや?
歯の治療ってそんな簡単か?
お前もらじゃーやないし!
てか、助手まだ電話中!?ー

怒らすつもりか笑わすつもりか、なかなかチャームな女医さんや。

楽しいっちゃあ楽しいが、出来れば歯の治療は平穏無事に済ませたい。


アホな医者仲間が立ち去ると、すぐさま新たな来客が。


医者「オラ! ロコ(気狂い)」

ロコ「…」

医者「オラ! ロコ(気狂い)」

ロコ 「…」


医者「フエラ! ロコ! フエラ! ロコ!(出て行け気狂い! 出て行け気狂い!)」

ロコ「…」

医者「お~。トント ペロ~(頭悪い犬やわ~)」


ー犬かい!ー


仕事半分・遊び半分っつーよりも、もはや舐められてる感タップリの根管治療。

犬の名前がロコならば、飼い主自信もロコ。

ペットが飼い主に似るんか、飼い主がペットに似るんかはともかく、早く犬を追い出してくれんことには、飛んできた犬の毛が治療中の歯に入り、
”日本発! 歯の神経が犬の毛で出来た男!”
と、世界まる見えあたりで紹介される危険性間近!

まる見えは好きやが、神経が犬の毛になるのはちっとも嬉しくない。

3万5千円も払って神経を犬の毛に変えるつもりはサラサラない。
僕はそんなにロコやない。


そんなこんなで無事(?)に、神経の掃除は終わり、奥歯は半分ほどにカットされ、後は安物のクラウンを被せられるのみ。
それにて根管治療は終了する。

成功率は40%以下か!?
なんやかんやと90%か!?

不安は隠せない。


季節が変わり、冬の寒さが身にしみる頃。
右下奥歯の神経が、夏の毛から冬毛に変わるのかどうかは、犬のロコにも医者のロコにも、ましてやお天道様にもわかるまい。

そもそも犬に名前つけるなら、ロコやなくコロ。
間違っても気狂いなどと命名してはならないが、この犬に関しては特別に許可してもええやろう。


ここで一句!

日本から
遠く離れた
空の下
大枚はたき
犬毛神経