Diecisiete de abril-domingo-(4月17日の日曜日)。
予定どおり、San Juan Chamulaという村へ行ってきた。
二年前同様、なかなか開けた観光村。
路上には民芸品が数多く並べられ、村のあちらこちらで現地の方が織物などを売り歩く。
観光客は、それをなるだけ安く購入するために値切る。
当時は、僕らもその観光客のうちの1人やった。
だが、今回は目的が違う。
すべてはPOSHのため!
その為に1人10ペソも払い、corectivoに揺られてやってきたのだ。
アンドレスとファロンはチャリで後から来るとのことなので、一足先にPOSH探しに繰り出した(多分、アンドレスたちの目的は酒ではない)。
とりあえず騒がしい中心地を抜けて、外れへと歩いた。
もしかしたら、中心地の呑み屋にあるのかもしれないが、なるだけ現地価格で安く仕入れるのが貧乏人の生きる術。
調子こいて金持ち感覚でゼニをばらまくと、あとで泣きを見る!
「仕事で頭を使うんやない!
安酒の為に頭を使うんや!」
5分ほど歩いただろうか、まったく何もなくなってしまった。
とりあえず商店のおばちゃんに聞いてみる。
「Tiene posh?(poshある?)」
「知らん」
え? 無いならまだしも知らんて!
どーゆうことやと思いつつ、ひたすら歩くが、どこの商店にも麦酒すら置いてる気配がない。
置いてる飲み物といえば、ソフトドリンクか水ぐらいなもんや。
もしかしたら、店で呑むしかないのんかなぁ??
ちょっぴり諦めかけていたとき!
素晴らしき光景がしっかりと目に飛び込んできた!
砂糖やサルサや洗剤などの、日用雑貨のみが置いてある商店で、店主と客のおっちゃんが手にしている物。
それはあきらかにCerveza(麦酒)であった。
真っ昼間から呑んでるようなやつは、確実に知らんはずがない!
ダッシュで聞きにいく。
「Tiene posh?」
「ここにはないわ」
ここにはないと言うことは、どこかにあると言うことで、存在を知っているからこそ言えるセリフなのは、猿にでもわかる簡単な答え。
即座に返す。
「Donde esta comprar?(どこで買えるの?」
※ちなみにちょこちょこスペイン語間違えてる可能性大!
すると、お客のおっちゃんが横から口を挟む。
「どれぐらい欲しいんや?
一本か半分か?」
「半分でなんぼ?」
「ここで待っとけ!」
おっちゃんはそう言うと、ささっと出て行った。
値段に対する返答はなく、ポケットの中にある200ペソで足りるのかどうか、不安だけが襲いかかる状況下で、とりあえず麦酒を頼んでみた。
「Señor dos cerveza por favor」
「Si」
「Cuanto?(いくら?)」
「ん~。24ペソ」
一缶10ペソの麦酒がたった2ペソ追加しただけで呑めるなんて、なんて良心的な店なんやと思ったのもつかの間、よくよく考えるとここはBARでもなんでもない、ただの商店やということに気づく。
じゃあ何故、ここで2人が麦酒をカウンター越しに呑んでいたのか?
それは、すぐに答えが出た。
店の端っこに置いてあるダンボールから、渋り渋り持ってこられた麦酒。
当たり前だがヌルい。
冷蔵庫ではなく、ダンボールに入っていたのだから当然だ。
そう、ここはBARではない。
ということは、この麦酒は売り物ではなく、店主とオヤジが昼間っからへべれけする為に置いてある私物だっというわけだ。
て、ことは、2ペソぼられたわけだ。
いや、まて、良い風に考えよう。
町で購入したのだとすれば、町からここまで車で30分。
ガソリン代と考えるなら安いもんや。
うん。それしかない!
椅子に腰掛け、生ぬるい麦酒を呑む。
うまい!
冷えてようが、冷えてなかろうが、昼間から呑む酒というのは、どうしようもなく美味いもんや。
ぷは~っ!
と、一服していると、オヤジが帰ってきた。
だが、手ぶらだった。
あれ?
あれれれれ?
もしかしてPOSHないの?
がっかりやわ。
麦酒代返してよ。
と、思ってたら、オヤジがふところから、透明な液体の入った、小さなペットボトルを取り出した。
ちょうどあの、なんでなんかわからんぐらい小さいポカリのペットボトルと、同じぐらいのサイズの物やった。
「これがPOSHやで」
まぢで!
やったあ!
ご丁寧に小さなプラスティックのコップまで、用意してきてくれているではないか!
何故3つあるのかは不思議やったが、とりあえずストレートで注がれた酒は、僕とゆうきちゃん、そしてオヤジの手もとに落ち着いた。
「お前が呑むんかい!」
とは、ツッコまずに爽やかな気持ちで乾杯をした。
初めて口にするその透明な液体を、恐る恐る口に運ぶ。
…きっつ!!
第一印象はその一言だった。
なんつーんやろう?
焼酎にスピリタスを足したような、ほんのり甘く、呑みにくく、確実に悪い酒やとわかるような、だがとても愛おしい味。
性悪やけど、どこか憎めない女とキッスしてるような‥
好きや。
僕は好きな味や。
度数でいえば、40度あるかないかぐらい。
クセが強いのでテキーラより強くは感じる。
店主がいうには、
「POSHはこの村のTradicionalな酒で、cañaとmaizで出来てるんだよ」
だそうだ。
さとうきびと、とうもろこしか。
僕は酒仙を目指しているだけであって、その道の達人を目指しているわけではないので、難しいことは言えない。
だから、この酒を一言で例えるなら、
「ラム酒と、樽に漬ける前のバーボンを、足してから2で割った酒なんちゃうのん」
だ。
まあ、そんな酒&麦酒をチェイサーがわりに呑んでいくと、次第に酔いもまわる。
オヤジはしつこく何度も、
「ジャッキー・チェンは日本人か?」
と尋ね、
僕らはそのたびに、
「違うよ」
と、答える。
店主は会話に入りながらも、サッカーの行方が気になるようで、ちらちらTVを横目で観る。
オヤジの右の鼻の穴からは、ぶらぶら黄緑色の物体が揺れ動く。
僕はそれを見て、ただひたすらに笑いをこらえながら、酒を呑み続けるだけだ。
オヤジは言う。
「もっと酒が欲しくないか?」
と。
そら欲しいに決まっている。
はいと答えると、オヤジは再び姿を消す。
そして、すぐに戻ってきた。
が、また手ぶらだ。
だが、今度はふところがぷっくり膨らんでいるのがわかった。
どやっ!
と、ばかりに隠しもった酒を出す。
「おお~!」
リッターボトルのビール参上!
これには一同大喜び。
しかし、栓抜きがないと言い出した。
何べんも言うが、ここはBARではないので、すぐに栓抜きが出るはずもない。
「この酔っぱらいめ! どアホ!」
なんてことは言わない。
これまた何べんも言うが、酒仙を目指すと言うことは、いついかなるときでも、酒を楽しむということ。
てことは、栓抜きの1つ持ってるのが当たり前の話なのだ。
そそくさと、自前の栓抜き付きソムリエナイフを取り出し、栓を抜く。
うまい!
人の金で呑む酒とは、何故こうも美味いのか?
それは答えるまでもない、ふところを気にしなくていいからだ。
そう言えば先週末も、現地人にビールをごちそうになった。
メキシコの酔っ払いは気前がいい。
Bien!!
テンションは最高潮に達し、酔っぱらい三人は、夜ストを聴きながら踊る!
オヤジはトラブルボーイズが気に入ったらしく、ずっと、
「トラブルボーイズ!」
と叫ぶ。
メキシコの酔いどれも、夜ストが好きなようだ。
Muy bien!!
そんなこんなで時間がたつと、アンドレスとファロンのことを、すっかり忘れていたことに気づく。
そろそろお開きな時間かな?
酔っぱらいもほどほどが一番。
「帰るわ」
というと、
「まあこっち来い」
と、店の真ん前にあるオヤジの家に案内された。
鼻くそぶら下げた酔いどれオヤジの家は、なんともキレイな三階建て。
この酔っぱらい金持ちか!
どうりで気前が‥
こうなってきたなら話は別。
アンドレスとファロンも呼んで、わいわいするしかないがな!
と、思っていたら、嫁はん登場。
かなり怒っている。
挨拶もなんなく無視され、険悪なムードに。
これはもうすべてオヤジのせいだろう。
普段マジメにしてれば、酔いの一回、二回はスルーしてくれるはずやし、どこの馬の骨かわからんやからを連れてきたかて、
「わ~お、日本人? おーいぇー!」
で、済む話。
が、きっとこの酔っぱらいは、毎週末昼間っから酒を呑んでは、どこの馬の骨かはわからんやからを連れこんでいるのだろう。
嫁はんの切れ具合でわかる。
とばっちりくらうのはごめんなので、そそくさと退散。
オヤジは不機嫌そうにサヨナラを言う。
きっとこの後は、嫁はんからかなり絞られるんやろう。
死んだなオヤジ。
Good by Adiós さようなら。
僕らはchingana(安酒場)へ行く金もなく、コレクティーボに揺られて宿へと帰った。
結局、最初のビールしか金払ってないので、POSHの値段は分からずじまい。
まあ、酒ってだいたいそんなもんやろう。
来週からは、結局水牛と格闘することにした。
水牛の乳焼酎に期待して、いざcampecheへと向かおうではなかろうか!