ファンダンゴと聞くと、ライブ好きさんは真っ先に十三ファンダンゴを思い浮かべるだろう。
そして、ライブに無関心な方は、なんとなく響きいいなぁぐらいにしか思わないだろう。
そして、僕たちは今後サンクリストバルを思い出すだろう。
Mercado(市場)近くのスーパーで発見したラム酒 ”FANDANGO”。
ファンダンゴとはスペインのダンスのこと。
陽気なダンスだそうだ。
て、ことはこれを呑むと陽気に踊れるのだろうか??
まあ、それはさて置きとりあえず購入することにした。
外面には、AÑEJOと書いている
。
確かに琥珀色してはいる。
が、きっと着色してるんだろう。
樽には漬けてはいまい。
なぜなら超がつくほど安いからだ。
その値段ナント、一本27ペソ(約200円)。
ベトナムで購入した、クソまずラム ”メコンラム”とタメをはる価格。
まずい可能性大な酒だ。
もしも、クソまずかったなら、僕らは泣きを見る。
なぜなら940mlもあるからだ。
だいたいウィスキーにしろ、ラムにしろ、ボトル酒は700か750が基本。
プラス200ほども多いのだから、二~三杯は切ない気分を味わなければならない。
切ない気分と言えば、買って帰ったボトルが700やった時ほど切ない時はない。
なんで700のボトルなんて作るねん!
と、言いたくなる。
50mlの差はデカイ!
50mlと言えば、気前のいいBARで呑む酒の一杯分はある。
てことは、一杯分損したっつーことや。
もしもこの世に、
”ボトルに物申す会”
なんてのがあるならば、即座に入会し声を大にして、
「700やめろ! 700やめろ!」と、叫ぶのだが、残念ながら現在は地区子供会なので、大人に言われるがままにうなずくことしか出来ないでいる。
無事に帰宅し、まずはストレートで呑んでみた。
「ん? なかなかイケるではないか!
てか、うまいやん」
若干ウソくさい味はするものの、なかなかうまい!
度も38あるし十分酔える。
ただ、確実に悪い酒なのはたしか。
だがまあいい。
どうせ酔ってさえしまえばこっちのもん。
こんなイカれた世の中じゃあ、こっちもイカれなつきあいきれない。
だから、十二分に安酒を呑んでイカれてしまえばいいのだ。
翌日。
アンドレスを誘い、共にファンダンゴをクーバ・リブレにして呑んだ。
日本ではキューバ・リブレ
。
アメリカではラム&コーク。
知らない人の為に説明すると、まんまラム酒をコーラで割るだけのコクテル(カクテル)だ。
ライムを絞ればなおウマし!
ちなみにコーラと言ってはいるが、僕らが買ったのはペプシ。
何故ならば、メキシコではコカコーラ2.5ℓが20ペソなのに対し、ペプシは同量で15ペソ。
5ペソも安い!
そして、5ペソ(約40円)あれば、ライムが7〜8個買える。
メキシコではライムが一つたったの5円ほど!!
日本なら安くても100円。
成城石井みたいな金持ちスーパーやと200円。
Muy caro!
高い! 高すぎる! アホか!
アレハンドロはリッチにコカコーラを飲んでるというのに、ハポネッサは40円ケチッてウソのコーラを飲んでいる。
まあようするに、
「何呑んでんの?」
と聞かれて、
「ビール!」
と言いながら、発泡酒を呑んでるようなもんか。
ツマミを食べながら、クーバ・リブレをやる。
すると、アンドレスが言った。
「今日レストランでギターライブやってるから行かん?」。
そう、僕らが寝泊まりさせてもらってるレストランでは、ちょこちょこライブが開催されている。
なんせ100人ほど収容出来るスペース。
使わな損。
呑み散らかした物の後片付けをし、レストランへ向かう。
徒歩5秒。
着くと、結構な客の入り。
なかなか人気があるようだ。
ボヘミアンな感じのボッサ系ライブ。
なかなかいい。
こんなライブ、タダで聴けるのもボランティアの特権!
と、思たら大間違い。
ライブ代を払う代わりに皿洗いでご奉仕。
21世紀の世の中で、金がないから体で払うなんてことしてるのは、きっと地球人ぐらいなもんやろう。
宇宙人が聞いたら、鼻で笑うどころか鼻くそつけられるわ。
皿がたまれば洗い、洗い終われば歌を聴く。
もちろんご褒美の酒などない。
わびしく目をつぶり歌を聴くだけ。
なんとも辛い!
するとアンドレス。
「いっぺん部屋戻ってラム酒呑んでからこよう」
なかなか知恵のまわるアメリカ人だ。
意地でもこのレストランでは金を使わないつもりなのだ。
イカした考えや。
賛成だ!
徒歩5秒で宿へもどり、FANDANGOを呑む。
しかし、ゆうちょうに呑んでいる時間はない。
Por que(なぜなら)ライブが終わってしまうからだ。
なので、一気に呑んで、ダッシュで戻る。
その姿はまるで、我慢出来ずに会社の便所で隠し持ったワンカップを急いで呑む、アル中リーマンのようだ。
とても醜い。
そして、アンドレスに関しては、ガンジャも吸わなければならないので大変だ。
酒を呑み終えたら、自ら巻いた悪いタバコを一吸い。
そして、揉み消したあと胸ポケットに入れる。
再び吸うためだ。
一本のタバコを一吸いしては消し、再び火をつけては吸い、また消す。
わびしい。
心からわびしい。
もしも、このときに神様が現れて、なにか違う生き物に生まれ変わらせてあげるよ。
と言ったなら、僕らはすぐさま、
「じゃあ鳩にしてください!」
と、言っただろう。
なんせ鳩は、
ポッポッポ~ 鳩ポッポ~
豆が欲しいか そらやるぞ~
と、歌になるぐらい、タダでメシを食える存在だからだ。
それに比べ、僕らはさまざまな出来ごとにより、鳩が豆鉄砲くらったような顔をすることはあっても、金がなければ豆すら食えない。
なんもせずとも飯が食えるという、鳩以下の存在である人間。
そんな人間からタダで豆をもらうことが出来る鳩。
鳩と人間はとてつもない関係で成り立っている。
なんだかむしょうに腹が立ってきた。
これからは鳩に豆などやらずに
豆鉄砲をくらわせたろう。
うん、決定や。
そうこうしてる間にライブは終わった。
一気呑みのせいで酔っぱらったのか、ガンジャで気分がよくなったのか、勢いづいたアンドレスが、
「別の店で酒呑んで踊ろう!」
と言ったので、あくまでもここではなく、別の店で金を落とすことにした。
節約ガンジャマン・アンドレス。
そして、アル中ビンボニスト・ハポネッサ。
貧乏この上ない三人は、風邪で寝込んでいる、特大ミサイルランチャー・ファロンを置いて、夜の町へと繰り出したのだった。