2011年8月31日水曜日

オールド&ヒッピー

8月7日(日)
ついにレチュギージャスを後にした。
家族やボニー一家と再び会うことを約束。
ロマンとの別れ際泣きそうになり、呑んだくれフアンの涙目に感動し、結局ガウデの息子からマッサージ代30ペソを貰えぬまま、小汚いバスに乗りこんだ。

ベラクルスに到着すると、ボスの娘・ロシオと、その恋人ホルヘが待っていた。

グロリアの手作り料理である、モーレとミニージャを渡す為に待ち合わせしていたのだ。

荷物を渡した後、即座に別れを告げようとしたが、バスが当日の夜23時出発しかないということと、仕切りにロシオがバス出発まではどこに行くのかを聞いてくる為、結局ホテルには行かずにロシオの家で休憩することになった。


出発までの間に色々話していると、電話のかけ方を聞いたつもりが電話をかけて欲しいと伝わったのか、ロシオが携帯から次の行き先、Oaxacaにある、”El ranchito(エル ランチト)”の女主人・Nuria(ヌリア)に電話をかけてくれた。

ここに来て初めての、電話越しでのスペイン語での会話。

若干緊張したが、明日の朝6時半にオアハカの二等バスターミナル”AU”に到着することを伝えることが出来た。
彼女は8時に迎えに来てくれるという。

そして、電話越しの声から、ヌリアがお婆ちゃんであることが判明した。

僕は婆ちゃんっこやから、婆ちゃんが大好きや。

乳首の珍毛は数日前に無くなったが、運がやってきた予感。

次の農場では、なんとなく楽しくやっていけそうな気がした。

今回はWWOOFではなくイビキのうるさいホセからの紹介やし、一日三時間半の手伝いでいいみたいやし、カップルの為の部屋もあるってゆーてるし。

ただ、飯がついてるんかどうかだけが心配や。

まあ、無けりゃ無いで草でも食うか!

8月8日(月)
予定より約2時間遅れでオアハカに着いた。

言葉が通じてなかった為に、ヌリアを一等バスターミナルで三時間も待たせてしまった。

まあ、僕らは僕らで二等バスターミナルで二時間待ったが。

結局三人が出会えたのは朝の10時。

それからタクシーに乗って、グエンヅラインにある”El ranchito”を目指した。

にしてもNuriaってば、なんてヒッピーなんでしょう。

海外やパーティーなどで、よく見かけるヒッピーめいたのとも、ヒッピールックがお好きな若者とも違う。

ヒッピーであることを主張していないのに、ヒッピーであることがあからさまに解る。

とにかくオーラがヒッピーや。

この先、
「ヒッピーて一体なんなん?」
って聞かれたら、
「彼女や」
って答えることにしたいぐらいヒッピーや。

彼女自身もこう言っている。

「昔からずっとヒッピーやってきて、今はここに住んでるの。
あっ。ドラッグはやらないよ」。

今年68歳。

「子供が四人に孫もおるけど、みんなヨーロッパに住んでるし、知らん!
私はいま自由だ~!」

町からタクで約20分。
ランチョに到着すると、僕らの他には誰もいなかった。

どうやら僕らだけが手伝うらしい。
でも、まあとりあえず今日は仕事はナシ。

MEZCAL(メスカル)で乾杯し、明日から楽しくやって行こうぜ!
的な話をした。

とにかく朝3〜4時間働いたら、後は自由らしいし、飯も3食あるし、専用の部屋もめちゃくちゃキレイやし。

のんびりやって行こうと思う。

なんせ僕らは、自由で貧乏。
そして、彼女はオールド&ヒッピー!

怖いもんナシや!

メキシコ人はコロナが嫌い

とうとう8月に入った。
なんやかんや延びたが、8月7日(日)にこの町を出る。

ちなみに今は5日(金)。
出発は明後日。

先週に引き続き、マッサージが忙しい。

なんせ小さな田舎町。
日本人が出て行くということが、一瞬にして知れ渡る。

だから、ここぞとばかりにマッサージの依頼が殺到するし、
「家にご飯食べにおいでよ」
とのお誘いもちょこちょこ入る。

嬉しい限りや。

出て行くというとみんな、
「この町を嫌いになったの?」
と聞いてくるが、そうではない。

大好きやからこそ出て行くのだ。

このままあと二ヶ月も居候していては、逆に町の人らが僕らを嫌いになるやろう。

「ええかげん帰れよ」
と。

だがしかし、また帰ってくるつもりでおる。

町の人たちや、レオン一家やボニー一家にまた会いたい。

レオン一家にいたっては、家族扱いしてくれている。
だから僕も家族のように思っている。
”ファミリア エン メヒコ”!

そういや、最近仲良くなった、ロマンの娘の15añosにInvitación(インビタシオン:招待)されている。

メキシコでは15añosと言って、15歳になった女の子を盛大に祝う習慣がある。

成人式のように、ハタチになったチンコマンコを一斉に集めたはいいが、ロケット花火打ち上げられたり、しばかれたり、説教するつもりが、逆に絶叫する羽目になるような、アホアホパレードではない。

15歳の誕生日に、その女の子の為だけに、家族や友達、町の人たちが総出で祝う。

ドレス来て、タキシード姿の男のコにエスコートされ、ビール呑んで、ええ飯食って、踊り狂う。
まるで結婚式や!

まだ行ったことないので、ぜひ行きたい。

あっ。
男の15añoはないよ。
しょせんただの種馬や。



このまま行くと、またシモネタ系日記になってまいそうやので、ここらでキモチを切りかえるとしよう。

「メキシコのビールといえば?」
と日本人に尋ねると、大半が
「コロナ」
と答えるのではないだろうか?

コロナの瓶に差し込まれたライムを、人差し指で中に落としては乾杯する。

まあ、これが主流やろう。
僕も昔はよくわからないままに、こうして呑んでた。

でも、コロナはあまり好きやないので、ごくごくたまにね。

しかし、実際メキシコに来てみると、こんな飲み方してる人は1人も見たことがない。

こっちでは、cerveza(セルベッサ:麦酒)を注文すると、ライムと塩が皿にのっかって出てくる。

それを好みに合わせ、ライムを絞っていれたり、塩を瓶や缶、またはグラスの淵につけて呑む。

メキシコではそれが主流や。

でも、コロナは若干苦味があるせいか、まんまで呑んでる人の方が多い気がする。

それに、コロナよりSol(ソル)の方が人気がある。

きっと薄味のビールに、塩とライムがよく合うからやろう。
僕もソルの方が好きや。

でも、日本のビールはキリンがいい。
クラシックラガーの苦味が好きや。

昭和、大正、明治シリーズが売ってた日にゃ、大喜びで買い込む。
苦味とコクがたまらん。

が、この太陽の国で生活する男たちは、苦味があまり好きではないようや。
クッキーとかチョコミルクとか、甘いモン大好きやし。

だから、乳搾りの爺ちゃん・ロマンは、コロナが嫌いで呑まへんし、マルセリーノも、
「ソルとコロナ、どっちが好き?」
と聞いてくる。
「ソル」
と答えると大喜びやが、
「コロナ」
と答えた日にゃ、きっと手に持ったトンカチで頭カチ割られるやろう。

ロベルトに至っては、一度口に含んだコロナを、
「うわ、まずっ!」
と、店の真ん前で吐き捨て。

「こんなクソみたいなビール呑めるか!」
と、悪態をつくほどや。

もしかしたら日本に置いてあるコロナは、メキシコで売れ残った結果、シブシブ送られてきた物なのではないだろうか?

それも腐りかけ手前のコロナを。

そうやとしたら納得がいく。

メキシコで呑むコロナと、日本で呑むコロナとの味の違いに。

日本でコロナを呑むならば、”michelada”(ミチェラーダ:ビールにサルサやライムを入れた、バカうまカクテル)にするべきや。
味が誤魔化されるばかりか、めちゃウマやから。

日本に帰ったさいには、ぜひぜひ皆さん、合言葉”ミチェラーダ”で、乾杯でもしようではないか。

とびきりうまいミチェラーダを作りますよ。

だから、たくさんの発泡酒を用意しといてよ。

多分普通のビールじゃ、逆にまずくなるから、発泡酒あたりが最適やと思うし、日本じゃコロナは高いから、なかなか買えないし。

なんかむしょうにBARやりたくなってきた。

あ~おっ!

ー僕の好きなメキシコビールー
(メキシコに行くことがあれば、ぜひぜひ参考に)

ーリッター編ー
とにかく安く、量呑みたいなら、カグアマ!

Sol(ソル)…日本でも結構置いてる薄味セルベッサ。
ライムと塩を絞れば完璧すぎるほどにうまい!

脂っこい豚の頭肉のタコスを食べるときに、相性ピッタリじゃけん!
確か1180ml…23〜25ペソ。

Victoria(ビクトリア)…正味言うことなしの酒やね。
安いわ。コクあるわ。ミチェラーダにしてもうまいわ。
しょっぼいつまみとも合うわ。

この町にないのが残念なぐらいに、うますぎるセルベッサ。
確か1200ml…20ペソ。

Superior(スペリオル)…金はない。
でも呑みたい!
わがままいうならつまみも食べたい!
そんなときにはスペリオル。
若干薄すぎる味も塩とライムで気にしない気にしない。
酔ってしまえばこっちのもん!
確か945ml…15ペソ。

Indio(インディオ)…これがまたなかなか見んなぁおもたら、コンビニに大量に置いてあったりする。

ビクトリアにひけをとらへんコク。
そして男らしいボトルデザイン!

ああ、もう、今すぐ呑みたい!
サルサ舐めながら、夢見ながら!
確か1180ml…19ペソ。


ー高級小瓶編ー
うまいねんけど高いから。
どうせ呑むならこじゃれた酒場で、もひとつおまけに誰かのオゴリで。

Negra modelo(ネグラモデロ)…うまいね。うまい!
それしか言えんね。
つまみはいらん。逆に邪魔!

でも、ちょっと重いから一杯でいいし、小腹空いてる時に呑みたいね。
黄昏ながら。

Bohemia(ボエミア)…ネグラモデロを超えた極上セルベッサ。
週末や給料日に呑みたい男の酒。

メキシコ麦酒界のプレミアムモルツ!
でも、あのいや~なアロマはないからご心配なく。

自由奔放にチンポ丸出しで呑みたいね~ん!
ボヘミア~ン!

※共にオゴリで呑んでるから値段はわからん。
Lechuguillasの海沿いレストランでは、共に15ペソ。
でも、いつもニーチョのオゴリ。
Viva! Baco(バッカス)!















2011年8月30日火曜日

八月の迷走王

パパントラから帰ってきてからは、カルロスの手伝いやマッサージやらで、何やかんや忙しいまま一週間が過ぎた。

そして、とうとう運命の日がやって来た。

7月29日(金)。
朝食を食べているときに、ボスに言った。

「来週この町を出て行くよ」。

「何故?」

オアハカの農場を手伝う必要があるのだと説明すると、それならば仕方ないと納得してくれた。

が、ボスもグロリアも悲しんでいた。
正直僕もさびしい。

ボスやグロリア。そして、この町の人たちは、ホンマにやさしくしてくれるから。

でも、遅かれ早かれいつかは出て行かなあかん。

それが来週なんか来月なんかの違いなだけ。

それならば早い方がいい。
長くいればいるだけ辛くなる。

ベッドも相変わらず固いから、日に日に体にもガタがきてる。

人のマッサージをしてる場合ではないレベルに達している。

それに、八月に入ればより暑くなるやろう。

豚の臭いが増す前に、この小屋から出て行くのが得策や。

数日前に一匹売られていったとはいえ、まだまだ臭いの元は断ち切られてはいない。

それに、蚊の交尾を眺めるのにも、もう飽きた。
これほどまでに生命の誕生を呪ったことはない。

ボウフラだけは勘弁してくれ。


そして、忘れていたが僕は、タンポポ教の教祖。

新たな風に乗り、まだ見ぬ場所へふらりふらりと向かうのが、タンポポ教の基本的教え。

教祖がうっかり根付いてしまったならば、誰が悩める子羊たちを堕落した方向へと導くのだろう?

誰かが水を与えてくれることに慣れすぎていた。

水を与えられるのは、雨の日だけで十分や。

僕は丁寧に育てられるプランターではなく、放置プレイ大好きな雑草みたいなもんなんやから。

お世話されると萎えてしまうが、ほったらかされるとグングン成長しちゃうんだよ。

そんなもんだよ雑草わ。

そして、寝転ぶと意外と気持ちいんだよ雑草わ。

朝立ち・旅立ち・一人立ち…

ああ、ビザが欲しい。家が欲しい。職が欲しい。

正社員になりたいなんてワガママは言わないよ。

だけど、だけども、ある程度の収入は欲しいなぁ。

昨日はマッサージで350ペソと、リッタービールを3本稼いだ。

これが毎日でもあればかなりの高級取りやが、たま~にしかないんやもんなぁ。

都会ならもっと稼げるんやろうけど、なんせ労働ビザはない。

だから、無資格闇マッサージ師は、田舎の小さな豚くさい小屋で、こそこそと稼ぐしかない。

ゴビエルノ(政府)にバレないように。

なんせこの国のゴビエルノとポリはイカれてるらしいから、見つかると何されるかわからん。

まあ、大阪のポリもたいがいイカれてるが。

たまに信号待ちで隣にチャリポリが止まり、思わず、
「あっ! ポリや!」
と言ってしまうことがある。

するとポリは、
「誰がポリや!」
と、頭をはたいてくる。

なんでやねん?

誰がポリやて、あんたがポリや。
あんたがポリやなくて、誰がポリやねん。

ご丁寧に背中にポリスとまで書いてるくせに、自分がポリやということを理解していない。

きっと自分のことを、犬やとでもおもてるんやろう。

金さえ払えば犯罪を見て見ぬフリするこの国のポリと、自分のことを犬やと思っている大阪のアニマルポリスメンと、一体どっちがイカれポンチなんやろう??

まあ、そんなことはどうでもいいか。

1番の問題は、俺たちに明日があるのか無いのかや。

まあ、明日ぐらいはあるとして、

「…未来、あるのかな?」


















パパントラ? or パンパントラ?

7月20日(水)
前日に叫びすぎたせいか、裸でワイン呑んでたせいか、風邪をこじらせ寝込んでしまった。

熱も出てかなりしんどい。

それでも、ハニーのバースデー祝い in メヒコ。

せめてもと思い、残りのワインと、テキーラ NEW ボトルを開けて乾杯した。

2人がテキーラを好きになるきっかけとなった、"Real Haciendaーレアル アシエンダー"
という名前のやつをやっつけた。

寝て呑んで食べて、また寝てを繰り返すうちに、あっという間に夜になり床に入るが、外を走る車の音がうるさくて、まったく眠れない。

それに、宿の人間がドアをバンバン開け閉めする音を聞くたびに、イライラする。

客がおることを忘れているのか、夜中になっても話声とシャッターを開け閉めするガラガラガラ~という音が何度も何度も鳴り響く。

そういや昨晩もそやった。

何故や?
普通宿の人間も夜中には寝るやろう?

一体何をしてこんな遅くまで起きてるんや?

僕ら以外にも子連れの夫婦が一組泊まってるんやから、気を使いなさいよと言いたい。

そんな感じで眠れないまま、夜中の2時か3時をまわった頃、廊下から女性のわめき声が聞こえてきた。

「あ~」

一瞬、なにか事件でも起きたのか?
と驚いたが、よく聞くと何のこっちゃない、ただの夜のルチャ・リブレ(プロレス)や。

「あ~! あ~! お~いぇ~! ああ~!」

何度も何度も女は喘ぐ。

こんな夜中に。
こんな大声で。

恥ずかしくはないのだろうか?

他に客が泊まってることを知らないのだろうか?

それとも羞恥プレイか?

ここまでされたら笑うしかない。

深夜の廊下でパンパンパンパン‥
パパントラ。
いや、パンパントラ。

これはもう尊敬に値する行為。
しょせん男と女はチンコとマンコ。
アダムとイヴの真の名前も、チンコとマンコやろう。

すべての始まりはファックでしかないんやから。

しかし、ここで疑問が1つ。
一体やってるのは誰なんやろう?

宿屋の夫婦か?

それとも息子が彼女とやってんのか?

まさか、もう一組の夫婦ではあるまい。
ガキ連れなんやし。

しかし、なんぼなんでも宿の人間が、大声でおっぱじめたりはしないやろう。

しかも廊下で。


そこで僕は考えた。

1.深夜になっても人の話声がちょこちょこする。

2.誰かしらが出入りしている雰囲気が漂っている。

3.宿の名前が”Mesón del conejoーメソン デル コネホー”
(うさぎちゃんの宿)である。

これから推測するに、この宿は売春婦御用達の宿なんだろうと。

ならば、すべてにおいて納得がいく。

シャッターの音も、人の話声も、廊下での1ラウンドK.Oも。

きっと、酒に酔ったちょい悪オヤジが女口説いて、イタズラに廊下でおっぱじめたんやろう。

宿の人間も、ちょっぴり困り顔で苦笑いしてたんではなかろうか?

それにしても、あの狭い廊下で、どんな体位でリブレしてたんやろう?

バック?
駅弁?
正常位?

それとも、ミルマスカラスもビックリな体位で、この酔いどれルチャドールは、猛攻撃をかましていたのだろうか?

見たわけじゃないので答えは風の中。

ただ言えるのは、フィニッシュ決めた後の女のクシャミ1つで、男のナニは瞬時に萎えたであろうことだけ。

そして、僕は心の中で、
(Salud-サルー-(お大事に))
と言ってあげた。

今後、うさちゃんの宿なる名前のついたホテルには、何があっても泊まるまい。

僕は特にプロレスが好きなわけじゃないから。

リングの上にしてもベッドの上にしても、所詮ショーの方が盛り上がるんやろう?

チンコは使ってもガチンコではあるまい。

まあ、それでも三こすり半劇場よりは、ショービジネスか?

さよなら岩谷テンホー!
さよならパパントラ!
さよならうさぎちゃん!





場末の酒場でツイスト&シャウト!

lechuguillasを離れ、Papantla(パパんトラ)っつう観光地にやって来た。

仕事ではなく、たんなる息抜きに。
ハニーの誕生日祝いをするにも、豚小屋の隣りの小屋では格好もつかんしね。

7月19日(火)
町からタクシーで15分ぐらい走った所にある、『El tajin-エルタヒン-』という、有名な遺跡に向かった。

ボス情報では、町→遺跡=1人20ペソとのことだったので、1人15ペソのタクシーの方が安いはず。

だが、ボス情報は意外と間違ってることが多いので、もしかしたらもしかするかもしれない。

考えんとこう。

初のエルタヒン。
森林に囲まれた平地に、ピラミッドが数個立ち並ぶ。

遺跡マニアの僕がこの遺跡を批評するとすれば、まちゃあき風に言えば、
星1つ!!!!!

数は多いが、何か決めてにかける。

これといって見所がない。

有名なわりには意外としょぼい。
51ペソもするのに。

ただ、遺跡の隅を流れる小川が、キレイやったから良しとしよう。

そして、遺跡前でやってるこれまた有名な催し物を見る。

ボラドレスと呼ばれる催し物。

伝統衣装に身を包んだオヤジたちが、笛吹きながらポールの周りを儀式的ダンスしながら回る。

めちゃくちゃだるそうに踊る。

きっともう、同じ踊りを踊ることに疲れたんやろう。

毎日毎日繰り返す、同じ踊りを踊ることに飽きた中年男性。

そんな彼の気持ちを、心から理解したいとは思わない。

なんせこっちは、1人20ペソも払ってるんやから。

勝手に"およげたい焼きくん"でも聴いときゃいいがな。

仕事や仕事! ちゃんと踊らんかいな!

踊りが終わると、1人1人順番に、ポールを登って行く。

ポールの高さは30〜40メートルぐらいや思う。

てっぺんに四人登り終えると、ロープをぐるぐるポールに巻きつける。

そして、コマのようにポールを回し、その動きを利用して逆さ吊りになったオヤジたちが、ポールの周りを回りながら降りてくる。

一本のロープが命綱。

ちぎれたら、脳天かち割れて死んぢまうやろう。

太っちょのおっちゃんが1人、腰に巻きつけたロープと、ズボンのゴムが緩んで落ちそうになっていた。

落ちまい落ちまいと、腰のロープとズボンを必死に押さえつける姿は、決して美しいとは言えなかった。

きっと太りすぎているために、肉圧でロープもゴムもしっかりと締まらんのやろう。

仲間のうちの誰かが注意すべきや。
「飛べない豚はただの豚だ!」
と。

一通り見終わり、
「ここから町までは70ペソや」
と、観光客をぼったくろうとするタクシーをパスし、行きと同じ1人15ペソのタクで町に帰ってくると、同じ催し物が教会前で無料でやっていた。

しかも、みんな痩せていて動きがテキパキや。

わちゃあ!

そういえばここに来る前にボスが、
「Papantlaは小さい町やから何もないで」
と言った。

が、実際来てみると、レチュギージャスどころか、カランサよりもデカイではないか。
ホテルにWi-Fiもあるし。

しかし、たしかに何もないっちゃあ何もない。

でもそれは一部の人間からしたらの話で、物欲でなく酒欲の多い僕らからしたら、何もないことはない。

どこの町にもきっとそれはあるはず。

‥イカれた奴らが溜まる場所。

‥とびきり安く酔える場所。

そう、それはカンティーナ(酒場)。

僕らが歩くのは、いつだってティンゴン(最高)なカンティーナを探す為や。

トボトボと町を歩くこと数分。

やはりあった!

一瞬、扉が開いたのを見逃さなかった。

看板すら無い怪しげな扉のむこうには、数人の人影が見えた。

まだ4時すぎやいうのに、仕事もせずに酒を組み交わしているんやろう。

すてきや!
素敵すぎる!

これはすぐさま行かなければならない。

酒場の向かい側でビラを配る兄さんに、安いかどうか尋ねる。

これが1番大事。

すると安いとは答えたが、後ろにいたお姉さんが微妙な顔をした。

この微妙な顔は、
「えっ。安いかぁ?」
の顔ではなく、
「安いけどヤバイんちゃう?」
の方の顔やった。

ボラーチャ(酔っ払い)共がたむろしている臭いがプンプンや。

期待に胸膨らませ、重たい酒場の扉を開けた。


薄暗い店内。
ポツリポツリと現地人が、イスに腰掛けビールを呑んでいる。

西部劇に出てきそうな作りのバー。
なのに、この雰囲気にまったく似つかわしくない、シンセサイザーによる生演奏が行なわれていた。

よそ者の東洋人を見つめる冷たい視線。

いつもなら明るいメキシカンが1人か2人、
「へい! ハポネス? チーノ?
サル~!」
と、声をかけてくるはずなのに、今日に感しては、今すぐ帰りなさい的な雰囲気が流れている気がした。

しかし、ここで帰ってはダサい。
ダサすぎる。

が、いちおう隅っこの方のテーブルを選び腰掛けた。

カウンターに腰掛け、
「アイスミルクをくれ」
と注文してもよかったのだが、犬みたいな顔をした奴に、
「よそ者は帰りな」
と言われるのも嫌やし、左腕のサイコガンはとうの昔に無くしてしまっている。

だから、安全策として隅を選んだのだ。

カグアマ・ビクトリアを注文し、2人で乾杯!

メキシコ時間では19日だが、日本では20日の朝6時。

ハニーのバースデーを祝うには、なかなかこじゃれすぎた場所だ。
ここは。

愛想悪い店員が、客の席に着き酒を呑む。

負けじと売春婦も男性客の横に着き、ミニスカートからハミ出たボンレスハムを、右へ左へ大忙し。

ハムの人・別所さんでもこんなに忙しくはないだろう。

さっきのお姉さんの微妙な顔は、こーゆーことを思ってのことやったんやろう。

確かにカップルで入る店にしては、少々似つかわしくない。

ここは早々に、とりあえずもう1本だけ呑んだら出よう!

なんて考えてたら、ちょっぴりイカついオッちゃんと目があったので、かるくあいさつした。

すると、オッちゃんが、なんか手振りで伝えてきた。

店内がうるさいので聞こえないが、何を伝えようとしているのか、瞬時に理解した。

そう、
これは、
いつもの、
お決まりの、
貰いコジキの、
とてもうれしい、
It's a ショータイム!

た・だ・ざ・け!

キンキンに冷えた、新しいリッター瓶がテーブルの上に運ばれてくる。

イェ~イ!

貰いコジキ歴・30年。

子供の頃と違い、今では働けば金を稼げる大人。

好きな服も買えれば、好きなバーに行くことも出来る。

やのになんでやろ?
おごってもらえる瞬間て、なんでこんなにもうれしいんやろう。

嫌なことも何もかも忘れ、うれしさを噛み締めることが出来る。

そして、今、口に含んだこの黄金色した液体が、世界で1番うまい呑み物なのだ。


新たにもう1本おごってもらう。
と、同時にオッちゃんが相席することに。

顔は怖いが、やさしく無口なセニョールが、腰掛けてまもなく口を開いた。

「俺は1985年に韓国に行ったんだよ。
だから、お前たちに酒をお・ご・る・の・さ」。

僕は思った。
日本人であることは隠そうと。

これは、日本人であることがバレた瞬間に、運ばれてくるビールがストップすることを嘆き悲しむのが嫌やという、やらしい
気持ちではない。

日本人であることがバレた瞬間に、発狂したメキシカンにしばかれることを恐れるあまりの、安全策や。

が、しかし。
ゆうきちゃんに聞くと、もうすでに日本人であることは伝えているらしい。

ということは、予想するにこのオッちゃんは昔、韓国で誰かしらに世話になったから、同じ東洋人であるハポネスに、お返しをしよう。
と、いうのではないだろうか。

なんというラッキー。
VIVA 韓国!
VIVA メヒコ!

そして、VIVA ハポン!

ツマミ売りのにいちゃんが売りに来た、イカの酢漬けを肴に酒がすすむ。

幸せやなぁ~!
夢心地。

が、貰いコジキ学でいうと、幸せは長くは続かない。
夢心地のまま終わるには、何事も潮時が肝心。

それに呑みすぎると肝腎をいわす。

だから、そろそろ席を立ち帰ろうとするのだが、
「えっ。もう行くの?
もう一本おごるから、まだ呑もうよ」。

この言葉を聞くと、頭ではわかっていても、体が勝手に反応し、再び席についてしまう。

悲しいかなパブロフの犬。
いや、ただの駄犬か?

日本人がこの店に来たんは初めてやということもあってか、オッちゃんのテンションは上がり、結局おごりでリッター瓶が5〜6本空き、腹はパンパン。

ビールは好きやがビール党ではないので、そんなに量は呑めない2人。

若干吐きそうやし、そろそろホンマに帰らんと、誰かしらが不幸になるってときに、救いの神がやってきた。

シンセサイザーの兄ちゃんや。

何か一曲演奏してくれるみたい。

これは、
「ええ演奏だったよ。ありがとう!」
と言って、この場から切り良く帰れるチャンス。

「メキシコの音楽は好きかい?」

「好きやで」

「どんなジャンルが好き?」

ここで悩んだ。

町中を流れるメキシカンミュージック。
この国の雰囲気に合ってて好きやが、ジャンルと聞かれるとわからない。

日本にいても、エイトビートがなんなのかよくわからない僕。

遠く離れたこの国の音楽のジャンルなど、わかるはずもない。

が、ここで何かしら答えないと、帰ることは出来ないどころか、
「日本人はメキシコが嫌いなのか?」
と、ボコられる恐れすらある。

ヤバイ!
どうしよう!

そこでとっさに出て来たのは、やはりこれ。

僕らの合言葉。

「ロッカンロール!!」
(メキシコではロックンロールでなく、ロッカンロール)

すると兄ちゃん。
立ち尽くし考えこむ。

(さすがに無理か…)

そう思った瞬間、彼は静かに歩き出し、シンセサイザーの前に立つと、
「へーい、みんな~。
今からハポネスのために、ロッカンロールをやるぜ!
ツイストしやがれ、こん畜生!」
的なマイクパフォーマンスをした。

そして、
まさかの、
シンセサイザーによるロッカンロール生演奏が始まった。

誰の何ていう歌か忘れたが、聴いたことのある有名なロッカンロール。
を、兄ちゃんはスペイン語で歌ってる!

何や兄ちゃん、ロッカンロール好きなんやん。

この薄暗い酒場の中を、ロッカンロールが響き渡る。

すると、冴えない顔した酔いどれ共と、冷めた面した店員たちが、一斉に踊れ踊れとツイストコール!

ここで踊らにゃただのアホ。

ただのアホで終わるぐらいなら、せめて気の狂ったアホで終わりたい。

だから、僕は踊った。

たしなむ程度にツイスト!
呆れるぐらいにシャウト!

ア~オ!
ワ~オ!
フォ~!

場末の酒場でツイスト&シャウト!

回りに回った勢いのまま、僕らは店を飛び出した!

ついでに、
「明日3時にまたここで会おう!」
という、酔いどれ共との約束も頭から飛び出し、無事ホテルへと帰宅した。


このパパントラという案外大きな町にもしも行くことがあるならば、是非とも看板のない酒場を探し訪れてみて欲しい。

きっと言うだろう。
「日本人はアホみたいにツイスト踊るんやろ?」

そして、きっと怒るだろう。
「日本人は3時が何時かわからんのか!」
と。