パパントラから帰ってきてからは、カルロスの手伝いやマッサージやらで、何やかんや忙しいまま一週間が過ぎた。
そして、とうとう運命の日がやって来た。
7月29日(金)。
朝食を食べているときに、ボスに言った。
「来週この町を出て行くよ」。
「何故?」
オアハカの農場を手伝う必要があるのだと説明すると、それならば仕方ないと納得してくれた。
が、ボスもグロリアも悲しんでいた。
正直僕もさびしい。
ボスやグロリア。そして、この町の人たちは、ホンマにやさしくしてくれるから。
でも、遅かれ早かれいつかは出て行かなあかん。
それが来週なんか来月なんかの違いなだけ。
それならば早い方がいい。
長くいればいるだけ辛くなる。
ベッドも相変わらず固いから、日に日に体にもガタがきてる。
人のマッサージをしてる場合ではないレベルに達している。
それに、八月に入ればより暑くなるやろう。
豚の臭いが増す前に、この小屋から出て行くのが得策や。
数日前に一匹売られていったとはいえ、まだまだ臭いの元は断ち切られてはいない。
それに、蚊の交尾を眺めるのにも、もう飽きた。
これほどまでに生命の誕生を呪ったことはない。
ボウフラだけは勘弁してくれ。
そして、忘れていたが僕は、タンポポ教の教祖。
新たな風に乗り、まだ見ぬ場所へふらりふらりと向かうのが、タンポポ教の基本的教え。
教祖がうっかり根付いてしまったならば、誰が悩める子羊たちを堕落した方向へと導くのだろう?
誰かが水を与えてくれることに慣れすぎていた。
水を与えられるのは、雨の日だけで十分や。
僕は丁寧に育てられるプランターではなく、放置プレイ大好きな雑草みたいなもんなんやから。
お世話されると萎えてしまうが、ほったらかされるとグングン成長しちゃうんだよ。
そんなもんだよ雑草わ。
そして、寝転ぶと意外と気持ちいんだよ雑草わ。
朝立ち・旅立ち・一人立ち…
ああ、ビザが欲しい。家が欲しい。職が欲しい。
正社員になりたいなんてワガママは言わないよ。
だけど、だけども、ある程度の収入は欲しいなぁ。
昨日はマッサージで350ペソと、リッタービールを3本稼いだ。
これが毎日でもあればかなりの高級取りやが、たま~にしかないんやもんなぁ。
都会ならもっと稼げるんやろうけど、なんせ労働ビザはない。
だから、無資格闇マッサージ師は、田舎の小さな豚くさい小屋で、こそこそと稼ぐしかない。
ゴビエルノ(政府)にバレないように。
なんせこの国のゴビエルノとポリはイカれてるらしいから、見つかると何されるかわからん。
まあ、大阪のポリもたいがいイカれてるが。
たまに信号待ちで隣にチャリポリが止まり、思わず、
「あっ! ポリや!」
と言ってしまうことがある。
するとポリは、
「誰がポリや!」
と、頭をはたいてくる。
なんでやねん?
誰がポリやて、あんたがポリや。
あんたがポリやなくて、誰がポリやねん。
ご丁寧に背中にポリスとまで書いてるくせに、自分がポリやということを理解していない。
きっと自分のことを、犬やとでもおもてるんやろう。
金さえ払えば犯罪を見て見ぬフリするこの国のポリと、自分のことを犬やと思っている大阪のアニマルポリスメンと、一体どっちがイカれポンチなんやろう??
まあ、そんなことはどうでもいいか。
1番の問題は、俺たちに明日があるのか無いのかや。
まあ、明日ぐらいはあるとして、
「…未来、あるのかな?」
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