2011年8月30日火曜日

八月の迷走王

パパントラから帰ってきてからは、カルロスの手伝いやマッサージやらで、何やかんや忙しいまま一週間が過ぎた。

そして、とうとう運命の日がやって来た。

7月29日(金)。
朝食を食べているときに、ボスに言った。

「来週この町を出て行くよ」。

「何故?」

オアハカの農場を手伝う必要があるのだと説明すると、それならば仕方ないと納得してくれた。

が、ボスもグロリアも悲しんでいた。
正直僕もさびしい。

ボスやグロリア。そして、この町の人たちは、ホンマにやさしくしてくれるから。

でも、遅かれ早かれいつかは出て行かなあかん。

それが来週なんか来月なんかの違いなだけ。

それならば早い方がいい。
長くいればいるだけ辛くなる。

ベッドも相変わらず固いから、日に日に体にもガタがきてる。

人のマッサージをしてる場合ではないレベルに達している。

それに、八月に入ればより暑くなるやろう。

豚の臭いが増す前に、この小屋から出て行くのが得策や。

数日前に一匹売られていったとはいえ、まだまだ臭いの元は断ち切られてはいない。

それに、蚊の交尾を眺めるのにも、もう飽きた。
これほどまでに生命の誕生を呪ったことはない。

ボウフラだけは勘弁してくれ。


そして、忘れていたが僕は、タンポポ教の教祖。

新たな風に乗り、まだ見ぬ場所へふらりふらりと向かうのが、タンポポ教の基本的教え。

教祖がうっかり根付いてしまったならば、誰が悩める子羊たちを堕落した方向へと導くのだろう?

誰かが水を与えてくれることに慣れすぎていた。

水を与えられるのは、雨の日だけで十分や。

僕は丁寧に育てられるプランターではなく、放置プレイ大好きな雑草みたいなもんなんやから。

お世話されると萎えてしまうが、ほったらかされるとグングン成長しちゃうんだよ。

そんなもんだよ雑草わ。

そして、寝転ぶと意外と気持ちいんだよ雑草わ。

朝立ち・旅立ち・一人立ち…

ああ、ビザが欲しい。家が欲しい。職が欲しい。

正社員になりたいなんてワガママは言わないよ。

だけど、だけども、ある程度の収入は欲しいなぁ。

昨日はマッサージで350ペソと、リッタービールを3本稼いだ。

これが毎日でもあればかなりの高級取りやが、たま~にしかないんやもんなぁ。

都会ならもっと稼げるんやろうけど、なんせ労働ビザはない。

だから、無資格闇マッサージ師は、田舎の小さな豚くさい小屋で、こそこそと稼ぐしかない。

ゴビエルノ(政府)にバレないように。

なんせこの国のゴビエルノとポリはイカれてるらしいから、見つかると何されるかわからん。

まあ、大阪のポリもたいがいイカれてるが。

たまに信号待ちで隣にチャリポリが止まり、思わず、
「あっ! ポリや!」
と言ってしまうことがある。

するとポリは、
「誰がポリや!」
と、頭をはたいてくる。

なんでやねん?

誰がポリやて、あんたがポリや。
あんたがポリやなくて、誰がポリやねん。

ご丁寧に背中にポリスとまで書いてるくせに、自分がポリやということを理解していない。

きっと自分のことを、犬やとでもおもてるんやろう。

金さえ払えば犯罪を見て見ぬフリするこの国のポリと、自分のことを犬やと思っている大阪のアニマルポリスメンと、一体どっちがイカれポンチなんやろう??

まあ、そんなことはどうでもいいか。

1番の問題は、俺たちに明日があるのか無いのかや。

まあ、明日ぐらいはあるとして、

「…未来、あるのかな?」


















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