2012年2月1日水曜日

ゴーストタウン

Pueblo Fantasma
ープエブロ ファンタスマー
プエブロが町で、ファンタスマが幽霊。

ようするにゴーストタウンや。


この家に住み出した頃に先輩(ダブリのアロンソン)が、
「ハル。この家には幽霊が住んでるよ」
と、ご親切にも全くいらん情報を教えてくれた。

こんな時ホンマなら、
「お~。Muy amableームイアマブレー(どうもご親切に)」
って言うべきなんやろうが、心にもない言葉がとっさに出るわけもなかった。


その後、ボニーの娘マガリも、
「ハル。幽霊見た?」
と、突然尋ねてきた。

失礼なやっちゃ。


その時2人で、
「マジで? 嫌やなあ。出て行く?」
と不安になりながらも、結局今まで、何の支障もなく過ごしてきた。

いや、それは間違いか。

雨漏りはあるわ、電力不足で冷蔵庫は水漏れするわ、窓ガラスが足りてないから、外部から侵入してくるホコリはすごいわ、部屋は寒いわ…

幽霊以外の支障はありけりや。


話は戻り、12月の終わり頃から少しずつ変化が現れ始めた。


夜になると、やたらと犬が吠え出すようになった。

始めのうちは、
「まあ、犬もさびしいんちゃう?」
なんて笑っていたが、夜間咆哮が2週間以上も続くと、さすがにバカ犬共をかっさばいて調理したい気分になってくる。

自称・ミスター味っことしては、Hecho en Mexicoーエチョ エン メヒコー(メキシコ産)な犬肉を如何に調理するかに、興味がわいてくるわけや。


なんせミスター味っこになることが、僕の昔からの夢だった。

ーみんなから愛される下町の大衆食堂で、安物の豚肉を使い、如何にして極上のとんかつを作り上げるか?
とか、
ーマグロの赤身のみを使い、どのようにして、バラエティ豊富なマグロ尽くしの寿司盛りをお客さんに提供するか?
とか、
ー美味いもん食ったら、思わず手の平パ~ンて鳴らしてまうのが癖になって、周りから”柏手のヤス”って呼ばれるようになっちゃうとか…

あっ。違った。
とんかつ以外は将太の寿司や。


犬はさて置き、さすがに少し不安になる。

最近ではゆうきちゃんいわく、
「足音や話し声が聞こえる」
らしいし。

ひょっとしたら、ホンマに幽霊が住んでるのかも知れない。

てか、昨年の1月23日に、当時この家に住んでいたマーティーの兄貴・フリオが、病気のためにこの家で亡くなっている。
という話を、12月12日(グアダルーペ聖母の日)にマーティー本人から聞かされている。

今年の1月23日には親族総出で、ここへ弔いに来るそうやし。


そういうことから推測するに、「マーティーの兄貴が夜に徘徊してるから、六感冴え渡る犬共が吠えてるのでは?」
という説が、考えられる。
命日も近いことやし、帰ってきてるのかも。

まあ、それならそれでいい。

オアハカに住んでた一ヶ月。
毎夜毎夜、ヌリアの亡くなった兄ちゃんが徘徊してたワケやし。
若干慣れてる。

しかし、幽霊やなく、強盗か何かが日本人の家を狙ってるんやとしたら、どっちかゆーたらそっちの方が怖い。

なんせメキシコの泥棒は、犬だけでなく、電気のケーブルさえ盗むほど、金に飢えている。

こんな田舎町の電気ケーブルを盗むぐらいや。
日本人=金持ちと思われ、狙われる可能性はあるやろう。

メキシコ~アメリカ間の人身売買&臓器売買もあるそうやし…

なんせ毎日のように、行方不明のモンタージュが、ブラウン管の向こう側に流れている。

メキシコとはおっとろちい国である。
しかし、もっとおっとろちいのはユナイテッド・ステーツ・オブ・アメリカや。

なんせ、需要が無ければ供給は無い。

アメリカが求めなければ、メキシコでそういう問題は起きないワケやから。
…多分。

あいつらは悪や。
恐ろしいで、ホンマに。

ただ、今のとこ僕らは無事。

もしかしたら、オアハカにしてもこの家にしても、ゴーストが僕らを護ってくれているんやろうか?

日本人とメキシコ人。
関係ないっちゃあ関係ないが、何かしらついでに護ってくれてるんかもしれん。


このレチュギージャスという、とても静かで、時に呑んだくれが騒がしい、それでも平和な小さい田舎町。

そんな田舎町の中心には、日本人だけやなく、ゴーストも住んでいるという。


決して、地球の歩き方に載ることはないであろうこの町にも、色んなドラマがあるワケやから、幽霊の1人2人居ても不思議はないさ。


でも、やっぱり、ちょっぴり怖いなぁ。

そして、今夜もまたバカ犬共が、こりずにうるさく吠えやがる。

このうっぷんはベトナムで晴らすしかない。

なんせベトナムには、僕らがいまだかって食べたことのない犬肉料理があるからや。

この恨みは食べることで晴らすしか、僕らにはそれしか出来ないないではないか。

ああ、ベトナム産・エスニックワイン ”ル・カン”を呑みながら、犬肉を頬張る日がむしょうに待ち遠しくなってきた。

しかし、ベトナムはベトナムで、犬のゴーストが山ほどおるんやろなぁ~。

結論としては、地球=ゴーストタウンっちゅうことか。

うん。きっとそうゆうことや。

0 件のコメント:

コメントを投稿