この小さな町に、僕が一目置いてるヤツがいる。
心の中で”先輩”と呼んでいるヤツがいる。
ヤツはボスん家の二軒隣の家に住んでいる。
ヤツの名はアロンソン!
12歳で既に1回ダブッてしまっている、小学5年生の思春期真っ只中ボーイだ!
僕はいつか彼に問いたいと思っている。
「どんだけ勉強嫌いなんスカ? 先輩?」
高校生でもいっぺんダブればかなり焦るハズ。
しかし、彼は全く微動だにしない。
それどころか、三十路の日本人捕まえて、
「アヘドレス(チェス)やろうぜ、アヘドレス!」
と勉強そっちのけで、マブダチ感覚でチェックメイト決めこもうとしてくる。
が、彼の書くアヘドレスのつづりは”agedres”。ホンマは”ajedrez”。
間違っている。
オマケにルールはちょこちょこ変わる。
そんなだから、チェックメイト決めこむつもりが、チェス初心者の僕から一度もチェック出来ないでいる。
ちなみにチェックメイトはスペイン語で”ハケマテ”だ。
チェックはハケ。
吐けゆーたり、吐くん待てゆーたり、酔っぱらいには少々厳しいゲーム。
出来ればシラフでやりたいもんや。
そんな愛すべきアロンソン先輩が、ある日メキシコの地図を指しながらこう尋ねた、
「ハル。日本はどこ?」
…え?
「日本はメキシコのどの州にあるん?
こんな形の町、メキシコのどこ探してもないよ」
…マジっすか先輩!?
さすがにそれは…
どっからどう見ても僕らメキシコ人ちゃいますやん!
たのんまっせ先輩!
…しかし、これはメキシコの教育制度にも問題があるんやろう。
なんせ小学校の授業時間は毎日4時間だけ。
土日はちゃっかり休み。
確実に足りてないやろう。
のに、週1ペースで先生不在の為に、急遽休校になる。
不在の原因はいつも、
”Quien sabe?ーキエン サーベー”
「さあね?」だ。
授業にしても、ただ黒板に書かれた文字を、ノートに写すだけという簡単な内容。
だから、文字の読み書きがほとんど出来ない。
なんせ教科書が読めない。
宿題はいつも両親が読んで一緒に考える。
そして、ほぼ親が答えを教えて書かせる。
これじゃまったく意味ないんちゃうか?
っつーぐらいのお粗末な内容や。
そのわりには、幼稚園を卒業しないと小学校に進学出来ひんとか、小学一年生と二年生に限っては進級試験があり、合格しないとダブッちゃうなんていう、厳しいルールがある。
さっぱり意味が分からへん。
そんなことよりも、
「3+3は?」
と尋ねられたとき、
「6!」
と、指を使わずに瞬時に答えれるぐらいの力を、小学校二年生のガキンチョに教えるべきや。
あまりにも酷い。
先生がアホすぎるんやろう。
てことで、ときどき僕らが子供らに勉強を教えている。
と同時に学んでいる。
僕が教科書を読む。
↓
すると、言葉を聞いた子供らは意味を理解する。
そして、発音の間違いを指摘して教えてくれる。
↓
子供らが答えを書く。
↓
僕は文字の間違いを指摘する。
僕は発音を覚え、子供らは文字の読み書きを覚える。
なかなか画期的な教育システム。
7歳のガキンチョと30歳のプー太郎が、同じテーブルを囲んで仲良くお勉強。
教えてると言うよりは、教わっている。
ガキンチョに感謝!!
そんなある日。
ションベンちびりそうになるぐらい、ビビる一言を耳にした。
「先生の名前なんての?」
「ん~…。何やったかな?
忘れた!」
えっ? まじ?
ボスの孫・ゴージョは、5分ぐらい悩んだ末、ようやっと思い出した。
僕は思った。
(この国でなら先生なれるんちゃうかな?)
と。
しかし、
「急に寒なったから行きたくない」
「今日は雨が強いから行きたくない」
と言う理由だけで、歩いて2分のとこにある学校に行くのを嫌がるガキンチョたちを、平気で休ませるメキシコの大人たちに向かって、
「ちゃんと来させんかいアホ!」
と言う自信はない。
何故なら僕らも雨の日は、仕事サボっちゃうから。
この町の人らも、90%はそんな感じ。
雨が降ったらなんとやら~
風が吹いたらなんとやら~
みんな、”南の島のカメハメハ大王”みたいな生活をしているか
ら。
金は無い。
が、みんな自由。
魚が釣れりゃあ、みんなで分け合い。
果物が実れば、みんなで分け合い。
トウモロコシが育てば、みんなで分け合い。
どこの国でも、村生活ってのはこんな感じなんかなぁ~?
なんて思いながら、新たに知った真実。
先輩の弟もダブッてる!?
しかし、先輩の弟(9歳)は、V6の岡田くんにそっくりやから、きっと大丈夫やろう。
そして僕は、小栗旬にそっくりだ。
だから大丈夫だ。
0 件のコメント:
コメントを投稿