por que?ーポルケ?ー(何故?)
何故、僕らはメヒコに来たのか?
それはメヒコが好きだから。
para queーパラケー(何の為?)
じゃあ、何の為にメヒコに住んでいるのか?
それはスペイン語を勉強しながら、メキシコという国を、人を、深く知りたいから。
pulqueープルケー。
それは、忘れていたもう1つの目的。
これは、マゲイっつうサボテンから作られる酒。
白濁色で、鼻水みたいにドロ~ンとしたお酒。
2008年。メキシコ旅行中に、たった一度だけ出会った愛すべき酒。
この酒を呑むためにメヒコに来たのに、今まで一切口にしていなかった。
何故なら、ベラクルス州には無いと勝手に思い込んでいたから。
が、ベラクルス州にも存在するということを、ボスの口から耳にしたので、プルケを呑むため、僕らはマルチネスという町に出掛けることにした。
ここレチュギージャスからカランサまでタクに乗り、カランサからバスで揺られること2時間。
あっちゅう間にマルチネスに着く。
盆地ということもあり、12月やというのにクソ暑い町。
プルケは寒い土地でないと作れない。
だから、普通に考えりゃこんなクソ暑い町には無いのだが、ここはクソ暑いだけでなく、クソデカイ町なので、あちらこちらからプルケを売りにくるらしいのだ。
到着するとすぐに、1人の男性が声をかけてきた。
名前はハビエル。
ツーリストをしているらしい。
日本人に会うのが珍しいらしく、興味津々に声をかけてきてくれたのだ。
彼に町の中心まで案内してもらい、プルケの情報を収集する。
「プルケはリットル13〜15ペソ(だいたい80円~90円)。
たまに50ペソとかふっかけてくるから、それは買ったらあかん。
20でも高いよ!」
と、めちゃくちゃ親切に教えてくれた。
仕事はツーリスタだが、この案内は気持ちやからということで、金は一銭も払ってない。
ここがメキシコのいい所。
これがキューバだとエライ目に会う。
勝手に前を歩きながら、んだんだ話し、最後に金を要求してくる。
払わんと地の果てまでも追いかけてくる。
僕らは死んでも払わんが、あのしつこさには、金に余裕のある人は負けて払ってしまうだろう。
ハビエルと連絡先を交換しサヨナラ。
カランサ~マルチネス間にある、サン・ラファエロという町に住んでるから、ぜひぜひ遊びに来て欲しいと、住所と電話番号を手渡されたのだ。
機会があれば、ぜひ行こうと思う。
”プルケは高くても15ペソ!”
それだけを頭に叩き込み、まずは市場に向かった。
マルチネスには毎週木曜日になると、露天商がたんまり集まってくる。
これがかなりデカイ!
カランサの市と比べると月とスッポン。
こんだけデカけりゃプルケもあるやろうと、期待に胸膨らませて歩く。
が、いっこうにプルケなど見当たらない。
仕方がないのでその辺の人に話かけるが、どの情報もあまりアテにならず、ただただ途方に暮れるまま、5時間が経過した。
「もうあと1時間ぐらい探しても見つからんかったら、帰ろかあ」
諦めかけながら、最後の望みを毎日やってる町の市場に託し、フラフラ歩きながら、キョロキョロと酒好きっぽい奴を探す。
いかにもな感じの、肉屋のオッちゃんと目が会う。
「何を探してるんや?」
「プルケ!」
「プルケかぁ~。ちょっと待ってやぁ~」
するとオヤジ、隣に座ってたツレ2人と一緒になって考え込みだした。
「ちょっと待ってや!」
「お~い! お前知ってるかぁ?」
向かいの肉屋の兄ちゃんに尋ねる。
そして、考えこむこと約10分。
オッちゃんのツレの描いてくれた地図は置き去りに、向かいの肉屋の兄ちゃんが、店まで案内してくれることになった。
肉屋から5〜6分ほど歩いただろうか。
入り口がカーテンでふさがれた、いかにも怪しい感じのカドにあるBAR。
名前はあるのか無いのかよくわからん。
ただ、白い壁にペンキで描かれた
”Pulque fría”
ープルケ フリアー(冷えたプルケ)
という、下手くそな文字だけが何故か目立っている。
これはまさしくプルケBAR、通称・プルケリアや!
兄ちゃんと握手を交わしたあと、カーテンを恐る恐るめくり店内に踏み込む。
地元民らしい男共が、3~4人ほどカウンターに腰掛け酒を呑んでた。
白く濁った酒。明らかにプルケや。
やったぁ~!
心の中で叫ぶ。
一応、バーテンダーの兄ちゃんに尋ねる。
「プルケある?」
「あるよ」
テーブルに腰掛け、プルケを待つ。
とりあえず1リットル頼んだ。
が、値段を聞いてないことに気づく。
しかし、壁を見るとデッカく、
ープルケ 1リットル 13ペソー
と、書かれているではないか!?
これはハビエルが教えてくれた、プルケの最低料金。
なんて庶民的なバーなんや!
Que padre! ーケ パードレー
(イカす~!)
そして、とうとうお目当てのプルケが、テーブルへと運ばれて来た。
約3年ぶりのプルケ。
かなりドキドキ。
その白く濁った液体を、そっと口に運ぶ。
口当たりは柔らかい。が、発酵しているせいか、唇を少しピリッと震わせる。
そのまま舌へ。
甘い。とろみが少ないので、思ったより軽やかに流れる。
あっという間に、冷たい液体が喉を通過する。
「うっま~!」
こら上手い!
何かで割ってるんやろか?
呑みやすい。
3年前、クエルナバカ外れの町にあるBAR
”Las limones”
で呑んだ、鼻水プルケとはまた違った味。
ぐいぐいイケる!
これなら1人で3〜4リットルはイケるんちゃうか?
おかわりしよかぁ!
なんて思っていたが、なんとなく冷たい視線を感じるではないか。
ーは?
これはもしや?
例の?ー
よく見ると、壁にはどエロなポルノグラフィティが、そこかしこに貼られている。
来た!
やっぱり!
売春BARや!
ひ~!
カップル厳禁やん!
隣の部屋の壁には、DROGAードロガー(麻薬)て書かれてるし!
こら早々に立ち去ろう!
ってことで、プルケ2リットル持ち帰りを頼み、スタコ~ラサッサ~サ~ノ~サ~で、店を後にした。
マルチネスで見つけた、名もなきプルケリア。
泥臭い男共が、冷えたプルケを大量に流し込んでは、生ぬるいプルケをこれまた大量に発射する。
僕たちが口にしたプルケが生ぬるくなくて本当によかった。
なんせ、プルケ以外はビールすら置いてないという徹底ぶりを見せる店だ。
冷えたプルケが無くなった場合の対処法は、口には出したくないほどグロいモノかもしれないい。
そんな店に長居は禁物。
あの便所に横たわってたゴキブリは、きっとプルケを呑んだからやろう。
冷えたプルケを呑んだのか?
それとも生ぬるいプルケを呑んだのか?
それは、神のみぞ知る。
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