2012年1月12日木曜日

ぜんぶロヘリオのせい

12月17日(土)
15añosーキンセアーニョスー当日。
朝も早よから”Casa Campesino”では、着々と準備が進められていた。

Casa campesinoーカーサ カンペシーノーとは、田舎の家。もしくは、農家みたいな意味。
レチュギージャスに唯一存在する、公民館みたいなとこである。


スタートが19時からなので、僕らは家で飯作ったり、プランターに水かけたり、火を起こしたりしながら時を待つ。


んだんだしていると、あっという間に穏やかな時は過ぎ、初めてのキンセアーニョスへと足を運んだ。

向かう途中でレオン一家と合流。

カンペシーノに着くと、何故かそこにはあの腐れポンチ、ロヘリオが存在していた。

ゲッ!?

ボスの手前、嫌々あいさつを交わす。
そして、シレッとサヨナラするつもりが、何故かこいつも相席することに。

仕方がない。

ロヘリオは、レオンの勤務先のパトロンのバカ息子。
30過ぎて、未だに働いたことがないという、人生のツワモノで、チェ・ゲバラをこよなく愛している。
そんな、ある意味で革命児な彼が、僕らとの相席を望んだのだから、相席するしかないのだ。

もちろん話かけはしないし、話かけるなという雰囲気をかもし出していたせいか、たいして話かけてもこなかった。

まあまあ、そいつは無視し、次々に運ばれてくるビールを、浴びるように呑みまくる。

日本の結婚式と違い、乾杯の音頭はなく、それぞれが勝手に酒をあおる。
自由や!
まあ、結婚式っぽいだけで、結婚式ちゃうしね。

しばらくすると、晴れ舞台の主役であるサイアンが、教会からオス2人にエスコートされながら、カンペシーノへとやってきた。

そして、挨拶的なモンをすませたあと、各自持参したプレゼントを渡し、おめでとうを告げる為に、彼女のもとへと向かう。
もちろん僕らも向かった。
レオンの孫たちと共に。


その後はもう、呑めや騒げや踊れやのイカれ三昧。
前夜にさばいた肉を肴に、ビール、カーニャ(さとうきび焼酎)、テキーラを、これでもかっつーぐらいにアホほど呑みまくる。

「もう十分やで」
と時計を見ると、0時をまわっていた。

(腹もいっぱいやし、そろそろ帰りたいなぁ)
ってところで、ウィスキー&ソーダが登場!

「こんなもん出されたら帰られへんがな!」

しかし、腹がいっぱいなので、ちびちび呑む。

ちびちび呑みながら世間話していると、1人の酔っ払いが近づいて来た。

「ライター貸してくれ」

「ごめん。持ってないわ」

この町じゃ見かけんツラした男や。
隣のカランサの人間か?
それとも、全く違う町から来たのか?

どっちにしろよそモンか。

向かいテーブルのおっちゃんから火を借り、そいつは僕の隣に腰掛けた。

そして、なんやかやと話かけてくる。

「どっから来たの? 中国?」

「髪型イカしてるね」

軽く10分ほど相手したろうか?

なんかだいぶ目もやばいし、こいつを追い払うか、僕が席を立つかせんとややこしくなるなと考えていると、
「あっちでツレが呼んでるよ」
と、まわりの人らがそいつに伝えに来た。

それでもこいつはなかなか席を立とうとしない。

すると、そのツレらしき奴がこっちへ近づいてきた。

そして、そいつを立たせ話出した。

(立ち話せんと連れて帰りゃいいのに)

そう思いながら2人を見ていると突然、後から来た男がこいつの胸ぐらをつかみ出した。

そして、右拳がうねりをあげ、先人は僕らのテーブルの上へと、ぶっ飛ばされた。
闘いのゴングが鳴らされたんや。

飛び散る琥珀色の液体。
グラスは割れ、ガラスへと変わる。

倒れた先人を、掴み上げては再び倒す。

まわりの男たちが後から来た男を止める。

「何やってんねん! お前こらぁ」

その通り!

ホンマにそや。
何が理由でそこまでするんや?
そして、この後の始末はどないするんや?

そんな険悪なムードが流れる中、ただ1人、目を輝かす男がいた。

それは何を隠そう、我らがBOSS・レオンである。

ちなみにBOSSはスペイン後でjefeーヘフェーだ。

先ほどまで眠気まなこで、めちゃくちゃ帰りたそうにしていたヘフェ。

孫たちに、
「ダンスはまだ終わらない」
と、帰ることを拒否されたヘフェ。

が、この騒ぎを理由に
「帰ろう!」
と言い出した。

やったねヘフェ!
ツイてるね。
ノッテるね。

そして、僕らは場を去った。

僕が呑む予定だったウィスキーは、母なる大地に捧げて場を去った。


それにしても、酔っ払い共のケンカの原因は何なのか?
もしかして俺?
俺が相手しなければ?
と、2人で話していたのだが、後日原因は判明した。


この夜ケンカした酔っ払い2人は、実は泥棒。
しかも、先に来た酔っ払いに関しては、タクの運ちゃんをしながら兼業で泥棒しているという。
なかなか器用な奴や。

じゃあ一体何故、2人がケンカになったのか?

それは先に来た彼が、携帯を盗めなかったからだ。


この時、僕らが座っていたテーブルの上には、携帯が1つ置かれていた。

そして、この携帯に目をつけた酔っ払いは僕に話しかけに来た。

が、レオンの奥さんグロリアが即座に携帯をしまいこんだので、獲物は消えさってしまった。

目的が無くなり、ただただ僕と話すだけになってしまった酔っ払いを、もう1人の酔っ払いが、
「何してんねんお前!
何で携帯パクれてないねん!」
と怒り、殴ったのだ。


なんともイカつい話である。
そして、何故泥棒をこの場に招待するのか?
不思議な話である。

しかし、携帯がテーブルの上に置かれていなければ、確実に起きなかった事態。

こんな危ない国で、携帯を置きっぱなしにする奴はなかなかいない。

この国に来て初めて、携帯を置きっぱなしにする奴を見た。

しかも、観光客ではなく現地人。

携帯の持ち主。
それはロヘリオ。

30歳を過ぎ、未だに働いたことのない異端児。

このアホのせいでみんなが嫌な思いをした。

当の本人は、知らぬ存ぜぬでプラプラ歩き回っていたというのに…。

こいつがパパから買ってもらった大事な携帯を、ちゃんと懐にしまいこんでれば、こんなことにはならなかったのだ。

クラリネットと携帯はとっても大事にするべきなのに。

これやからよそモンはイカン!
災いのみを運んでくる。

すべてはアホのせい。

Todo por culpa de Rogelio
ートード・ポル・クルパ・デ・ロヘリオー

「ぜんぶロヘリオのせい」
だ。

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