2012年1月12日木曜日

フルーツポンチ

ーフルーツポンチ。

それは、シロップ漬けの缶詰フルーツを混ぜ合わせ、場合によっちゃ寒天やら小豆やらが入った、ちょっと贅沢なおやつ。

子供から大人まで、フルーツポンチを愛する人は、
「ぼちぼちいてるんやないかなぁ」
と、思う。

僕はどちらかといえば、フルーツポンチを食べるよりは、
「フルーツポンチを逆さから読んでみて!」

「えっ!?
ち…ちん。  もう!」
と、生娘を恥ずかしがらせる方が好きや。


そんなフルーツポンチ。
ここメヒコでは、ノーチェブエナ(クリスマスイブ)やフィンデアーニョ(大晦日)に食べるのが伝統だという。


せっかくやから作り方を教えてあげるとグロリア母さんは言うが、
「フルーツポンチ。…正直全く興味ねぇ~!!」


が、教えてもらうことになった。

まずは準備。
リンゴ、パイナップル、ガヤーバ、テホコテ。(全部果物)
それに、干しぶどう、干しスモモ、砂糖とさとうきび。

そこに缶詰は用意されていなかった。

一体メヒコのフルーツポンチとは何なのや?
と、母さんに尋ねる。

母さんいわく、日本のフルーツポンチと違い、メヒコのフルーツポンチは温かいらしい。

ちなみにこっちでは、Ponche(ポンチェ)。
もしくわ、Te de fruta(テ デ フルータ)という。


温かい果物と聞き、より一層興味は薄れたし、確実に不味そうやから食べるのも嫌やなあと思いつつも、仕方なく教わる。


しかし、まあ、教わるって言ってもかなり簡単。

まずは果物を切る。
(干しぶどうと干しスモモは切らない)

りんごは変色するので、水に漬ける。
塩水ではなく、ただの水だ。

だから、若干変色した。
しかし、ここメヒコでは細かいことは言いっこなし。

りんごが少しばかり変色してようが、朝飯のスープにブユ(小蝿)が浮いてようが、何も言わずに食べるんや。
それがここのスタイルなんや。


果物を切り終えると、お次はさとうきびを切る。
竹みたいな分厚い皮を削ぎ落とし、一口大に切る。

これがなかなか力がいる。
が、まあまず、日本帰ってからさとうきびを切ることはないやろう。

母さんが言うには、
「さとうきびなけりゃあ黒砂糖(赤砂糖)でもいいよ」
らしいし。

切り作業が終わったら、沸かしておいた大量のお湯に固い物順にぶち込み、後は煮込むだけ。

なんとまあ簡単な料理なんだろうか。

そして、かなり美味しくなさそうだ。


しかし、その時はやってきた。

そう。味見。

母さんが言った。
「ハル。プロバール(味見)して!」

「うん」

母さんが鍋にスプーンを突っ込み、果物の煮汁を少しばかりすくい上げる。

それが恐る恐る僕の口に運ばれてくる。

まずそうやし、熱そうやし、一瞬、
「イジメちゃうのこれ?」
なんて疑問が脳裏に浮かんだ。

嫌々ながら、遂に煮汁が舌に着地した。


…ゴクッ。



「…うまっ! 何これ! めちゃ美味!」


とにかく美味い!

日本のフルーツポンチなんか足元にも及ばんぐらい美味い!

果物本来の甘みと、天然さとうきびの甘みがギュッと詰まったフルーツティー。

砂糖はホンマに少ししか入れてへんから、変な甘さはまったくない。

香りもいいし、想像していたもんとは、似ても似つかん絶品料理や!

これはホンマに美味い!
日本に帰ったらぜひ作りたい!

そして、ホワイトラムを少し入れて寒い夜に呑むんや。

こっちでは安モンのさとうきび焼酎を入れるけど、日本じゃラムを入れて呑もう。

体も芯からあったまって、たまらんぐらい酔えるハズや。


やっぱり食わず嫌い、呑まず嫌いはあかんね。
なんせ、料理修行も兼ねた旅やからね。

もっと勉強せなね。


フルーツポンチは缶詰よりも、逆さから読ますよりも、メヒコ流が最高や!
と、気づいたイブのお昼過ぎ。

今頃日本じゃ、イブにイカれた若者が、ラブホテルのフロント前で、三角座りしながら部屋が空くのを待ってるんやろうなぁ。

だっせぇぜ!!
そんなカップルだっせえぜ!

はっ!?
10年前の俺や!

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