2011年7月21日木曜日

WWOOF•Lechuguillas編 その6 ~ふさわしい家~

この農場での仕事も残すところ後3日。 
というところで、事件は起こった。 

6月30日(木)。 
台風の影響で前日から降り続ける雨が、いまだ止まないおっくうな日に、それは起こったのだ。 

いつもどおり仕事が始まる。 
昨日に引き続き、ゆうきと月曜日からやってきたMarcosは、阿呆のLauraと共になんやかんやさせられ、僕はCarlosと穴を開けたり耕したり。 
ボスは買い物のため、9時頃いなくなった。 

9時半になり、ゆうきちゃんに朝飯の用意をするように頼みに行く。 

今までは毎朝10時になったら、ボニーって食堂に食べに行ってたのだが、今週から一日飛ばしで家で朝飯を作らなくてはならなくなった。 

理由としては、 
「家に食料があるから」。 

だが、正直食料はほとんどない。 

阿呆なパトロンや。 

10時になり朝飯を食べに家に向かうとゆうきちゃんが、 
「手伝って」 
という。 

まだ終わってないんやと聞くと、 
「9時半になって準備しようとしたら、Lauraが10時になるまでは準備したらあかん」 
というので、結局今から作り始めるところだという。

にもかかわらず彼女は手伝いもしないで、エシャロットの種をいじくっている。 

朝は朝で、雨漏りで濡れた廊下を掃除させられたという。 

僕らは農業のボランティアでここに来ているわけであり、別に使用人でも家政婦でもない。 

だから、10時になり朝飯を彼女が用意しているならまだしも、僕らが彼女の分まで朝飯を用意するなんてことは、まったくもってオカシイ話や。 

さすがに腹が立ったので、この間違ったおまんこ野郎に一言いうことを決意した。 

「おい。なんで9時半から朝飯の準備したらあかんのや?」 

「お前らはボランティアやからどーのこーの‥」 

そのボランティアという一言にカチンときた。 

ロクに食材も用意しないで働かすだけ働かして、ようその一言が言えたなと。 

が、スペイン語初心者なのでうまく言えないから、とりあえず、 
「tu tonta!(君アホやろ)」 
と言う。 

まるで紳士的なツッコミをする一漫才師のように。 

え? 
ハル今なんて言ったの? 

彼女の驚いた顔を見たら、なぜかより腹が立ったので、お次は、 
「mierda!!(うんこ野郎)」 
を連発した! 

すると、やっとこさ悪態をつかれてると理解したようで、彼女も負けじと、チーノ(中国人)と返してくるが、こちとら痛くも痒くもない。 

「お前日本語しゃべれや」 

「でも、ここはメキシコ‥」 

「知らん知らん。うんこ野郎うんこ野郎うんこ野郎‥ 
日本語しゃべれ、うんこ野郎!」 

スッキリしたなぁ~! 
と、気分爽快感を味わった30分後、即座に家を追い出された。 

重たい荷物をひきずりながら、行くあてもなく雨の中をさまよう2人。 

そんな惨めな日本人を拾ってくれたのは、他ならぬBOSS。 

「はるとゆうきが好きなだけ、いつまででも、この家に寝泊まりしてくれてもいいよ。 
グロリアも子供たちも2人が居てくれたらうれしいんやから」。 

涙が出そうなぐらいうれしかった。 

そして、 
「もし、2人きりの部屋がいいなら、ボニーに一部屋空きがあるからそこを使ってもいいよ。 
家賃はいらないから。 
でも、キッチンはないから、ご飯は食べにおいで」。

ということで、BOSSのやさしさのおかげで、2人はまだまだこの町に居座れることになった。 

ただ、さすがにBOSSん家に毎日泊まるのも悪いので、ボニーの空き部屋に泊まることにした。 

食堂の裏手に存在する空き部屋。 

豚小屋の隣に存在する空き部屋。 

部屋と言うより物置小屋ちゃうん? 
と、思わざるをえない空き部屋。 

いくら掃除してもホコリがなくなることのない、工事途中の部屋にあるのは、BOSSの作ってくれたベッド台に板を敷き、その上にダンボールを敷いただけの簡素なベッド。 

そして、扇風機が二台に、使用不能のテレビとレンジがある。 
あと、ホコリにまみれた赤ちゃんベッドも‥。 

しばらくのあいだ2人はこの部屋で、豚の匂いと蚊の群れと戦いながら過ごさなければならなくなった。 

正直豚の匂いは臭い。臭すぎる。 

鼻が曲がらなければいいのだが。 

「やっぱり出て行くわ」 
と、言おうかなとも一瞬考えたが、ここまで用意されていまさら町を出ていくとは言えない。 

そして、ここから2時間ほど離れた町で仕事の依頼が来ていたらしいのだが、 
「はるとゆうきはこの町を去らないよ」 
と、丁寧にもBOSSは断ってくれたので、仕事のあてもなくなった。 

日本人=マッサージ。 
という勝手なイメージのおかげで、 
「マッサージしてよ!」 
という依頼が来たときだけ、マッサージをすることで臨時収入とただ飯が喰らえる。 

僕はプロではないが、マッサージに関してはなかなか評判がいい。 

そういえば昔オトンが、 
「はる。マッサージ覚えとけば社会に出たときに、先輩や上司に気に入られるし、なんやかや得するぞ」 
と、言っていた。 

正味な話、日本に居たときにマッサージで得したことといえば、ギャルをマッサージしてるときに胸の谷間を見れたことぐらいで、勃起はすれども出世や給料UPにつながったことは一度もない。 

マッサージがきっかけで、おまんまんとつながったことも‥ないことはない。 

が、今この日本から遠く離れたメキシコという国で、少しながらでも金を稼げているのだから、オヤジの言ってたこともまんざら嘘ではない。 

この町にいる間は、週に一度あるかないかぐらいのマッサージで日銭を稼ぎながら、このハウスダストっちゅーか、小屋ダストのすごい場所で生活をしていくのだ。 

今の2人にはここがふさわしい家なんやろう。 

家賃0円。 

昔憧れた漫画「ボーダー」に出てくる主人公・蜂須賀が住んでいる、家賃3千円の元便所部屋よりも安い部屋。 

ある意味夢が叶ったんかなあ~。 

ただやっぱ豚臭いのは敵わんなぁ~。 

刑務所ん中もこんな匂いするんかいな。 

ここで一句。 

豚小屋の 
近くの小屋で 
あのよろし 
ーハルキチ心の俳句ー

0 件のコメント:

コメントを投稿